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Tech Watch
KITTY-キーボードなしのブラインドタッチ
KITTY-キーボードなしのブラインドタッチ
携帯型コンピュータには何百万人という熱心なユーザーがいます。こうした人々の日頃の便宜に応えるべく、これまでにもさまざまな研究が行われてきましたが、入力方法については携帯型機器の多くが、いまだに問題を抱えています。

入力方法について、いくつかこれまでと違った解決法も登場してきました。しかしそのどれもが抜本的な解決策とはいえません。小型キーパッドを売り物にした装置が人気を博していますが、どんなに手先が器用な人がこの小型装置で入力しても、そのスピードは、標準キーボードでブラインドタッチをした場合にはかないません。ペン入力式システムでもスピードという点で劣るほか、入力も面倒です。さらにその習得も一筋縄ではいきません。

大きな課題:入力スピード
入力をめぐる問題は、ウェアラブルコンピュータの台頭を妨げてきた原因の一つでもあります。音声認識による入力システムはプライバシーの点で懸念があります。たとえば、空港のラウンジでeメールを周囲の人に気づかれないように入力することはもちろん不可能です。Handykey社のTwiddlerのような「コーディング」による入力装置を利用しても、一つの文字を入力するのに、一連の複雑なキーの組み合わせをユーザーが学ばなければならず、結果的に入力スピードが落ちてしまうという点が指摘されています。Twiddlerは、ウェアラブル用に開発された入力装置ですが、その習熟曲線たるや、大部分のユーザーが辿るにはあまりにも急勾配です。

そのような状況の中、カリフォルニア大学アーバイン校の機械工学博士であるカーステン・メーリング氏が、新たな入力方法を思い付きました。この方法が、ポータブル(あるいはウェアラブル)コンピューティング・システムの入力に関わる問題を解決する真の第一歩となるかもしれません。メーリング博士が今回発明した装置は「KITTY(キーボードなしのブラインドタッチ、Keyboard Independent Touch Typing)」と命名されています。ユーザーは、KITTYを指に装着することで、標準のQWERTY配列のキーボードで行うブラインドタッチと似た方法でデータを入力することができます。KITTYは、入力技術の習得が簡単で、製造コストが安く、手につけても違和感がなく目立たないことを目指して作られた入力システムです。

さて、右手はどこに置くのでしょう
グローブ形をしたKITTYの試作品を見てみると、各指先に伝導性の接点が一つずつ、そして両方の親指にそれぞれ六つの接点(指の表側に三つ、裏側に三つ)があるのがわかります。親指の接点は、QWERTY配列のキーボードでいう三つの列に相当します。つまり、真中の接点であれば「ホームキー列」に相当します。ユーザーは各指先の接点を同じ手の親指にある接点と接触させることで「タイプ入力」します。たとえば、左手の人差し指を親指の内側にある真中の接点に接触させれば「f」が入力され、同じ親指の上部にある接点に接触させれば「r」、つまり「f」の上に位置するキーが入力されます。同様に、親指下部の接点に接触すれば「v」となります。KITTYシステムのデモンストレーションは、KITTYのデモサイトからご覧になれます。入力信号は、本体のコンピューティング機器にある単純なキーボードのエンコーダーに送られて、モニターあるいはウェアラブルコンピュータならグラスマウント・ディスプレーに表示されます。

Tech Watchでは、このメーリング博士に今回の発明や他の入力装置、またウェアラブルコンピュータ全般についてお話を伺ってみました。

Tech Watch:KITTYのアイデアは、そもそもどのようにして思い付かれたのですか?

メーリング博士:私の事務室からコーヒーを飲みに行こうとすると15分かかるのですが、その道すがら、ウェアラブルを使いながらデータを入力するとしたら、どのようにしたらできるだろうかと考えたのです。歩きながら口を動かすのは嫌だし、周りの人も怪訝な顔でこちらを見る。そこで、ウェアラブルでデータを入力する時もブランドタッチのテクニックを活かせないかと考え、ブラインドタッチで入力する際に、親指はスペースキーを打つときしか使わないという点を思い出したのです。それなら、指を使ってタイプする時に親指の表面も使えないかというのが、そもそものアイデアでした。

Tech Watch:「グローブ式」の入力システムを使った新しい試みに興味があったとおっしゃっていますが、それはなぜですか。また、これまでのグローブ式入力システムがうまくいっていなかったとすれば、その理由はどのようなものでしょうか。

メーリング博士:もちろん手袋は汗をかきますからよくありませんし、長い間つけておくのも気持ちの良いものではありません。だから私の言う「グローブ」という言葉は広い意味で捉えてください。私たちが考えているのは、直接的には手の表面の接点だけを使い、基本的に他には何もいらないという入力システムです。Twiddlerは場所を取る装置なので、私は好きではありません。できるだけ邪魔にならず、使っていて違和感がなく、利用していることを周囲に気づかれにくいものが作りたかったのです。

これまでのグローブ型の入力システムは、人間工学の観点ではほとんど考慮されていません。利用者は、指をかなりごちゃごちゃ使わなくては入力もままなりません。既存のグローブ型の入力システムはコーディング方式のものばかりですし、ユーザーがこのコーディング言語を新しく学ぶ必要があります。でも新しいことなど習いたくない。これが本音だと思いますね。

Tech Watch:ウェアラブルコンピュータの入力にかかわる問題では、KITTYがその最終回答になるとお考えですか。

メーリング博士:KITTYは大変よい解決法だと思っています。広くその入力技術が教えられていて、すでに多くの人が習得しているブラインドタッチが基本だからです。KITTYなら、ブラインドタッチに親しんでいる人にとって、習熟曲線はゼロです。たとえブラインドタッチを知らなくても、そのやり方を教えてくれるインフラは十分に揃っています。Twidderの場合、ユーザーが使い方を学ぼうと思ったら、製造元に頼るしかありません。パンフレットや使用説明書は手に入るかもしれませんが、それ以外には何もないのです。

KITTYは電気回路を閉じて信号を出すという点において既存のシステムと違っています。LightGloveや SenseboardTMなどの既存のシステムは、連続的な信号処理を基本としています。それに対しKITTYは、電気回路を閉じると入力が行われる、不連続な信号処理を基本としています。不連続な信号処理は、通常どんな場合でも、連続的な信号処理より信号の読み取りが容易です。

連続的な信号処理システムの場合、指の位置に最善の注意が払われなければなりません。そうするつもりはなくても、ちょっと指を動かしただけで入力作業が行われてしまうからです。でもKITTYのような不連続の信号によりシステムでは、親指に触れさえしなければ、指を動かしたいだけ動かすことができ、これまでの装置と比べてかなり自由です。KITTYがうまく機能すると私が思うのは、それが理由です。

Tech Watch:ウェアラブルコンピュータは、近年ずっと「もうすぐ実現する」技術だと言われてきましたが、同コンピュータが今まさに手の届くところまで来たという意見をどう思われますか?

メーリング博士:その意見に賛成です。ウェアラブルコンピュータの時代はもうすぐそこまで来ていると思います。まずは大企業が同コンピュータを取り入れることが必要だと思います。たとえば、ベル・カナダ社では、ザイブナー社のウェアラブルコンピュータpoma™を導入しています。いくつかの大手企業がこうしたシステムを取り入れ、その利点が認識されれば、波及効果がおのずと生まれ一般の人にも普及するでしょう。

また、大手メーカーもこうしたコンピュータ関連産業に力を入れるべきですね。一番大切なのは、携帯用コンピュータにとって基盤となるインフラを整えることです。速くて安全、かつ安定したネットワークへの接続が必要になります。他のウェアラブルコンピュータやインターネット、さらに企業ネットワークとの相互接続性も必要となりますから。

Tech Watch:KITTYを商品化する計画はあるのですか?

メーリング博士:そうしたいからこそ、このシステムを精力的に宣伝しているのです。私たちの手元にあるのは非常に良いシステムです。これを市場に出せないかと本気で投資家を探しているところです。価格的には、市場に出回るようになって久しいワイヤレスキーボードと同程度と考えてもらえばいいですね。KITTYは新しいテクノロジーを基本にしているわけではありませんので。皆さんが慣れ親しんでいるキーボードを基本にしながらも、物理的処理を変えたこのシステムの実現はもう間近です。

マイケル・J・フェナー(Michael J. Fenner)

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